クリス・スクワイア追悼 : トム・ブリズリン
《yesworld.comから、クリス・スクワイア追悼メッセージを抜粋します》
クリス・スクワイアは、オリジナリティの塊のような存在だった。彼こそが真のコンポーザーだ。
あの心に残るベースラインはもちろんのこと、ボーカルハーモニーに関する耳の良さも。
イエス結成時から現在まで、彼の存在はバンドのアイデンティティの大黒柱だった。
同じミュージシャンとしても、一ファンとしても、ライブでのクリスのインパクトある演奏から、溢れ出るような感動を味わったものだ。
僕にとってイエスと一緒にキーボードで参加できたのは、この世のこととは思えない体験だった。
イエスの音楽を聴きながら育った自分が、今イエスと一緒にプレイしているなんて!
あの”フィッシュ”が!僕のキーボードステーションにずんずんと近寄ってくるのを見ながらステージでプレイしてるなんて!
ステージで”スターシップ・トゥルーパー”を演奏しているとき、イエスのあのハーモニーの一部になって自分も歌っているとき、体がバラバラになるような喜びを僕は感じていた。それも毎晩!
クリスはこの曲のハーモニーのパートをいつもとても大事にしていたので、彼があの大きなステージのどこにいようとも、他のメンバーがどのようにハーモニーを合わせているかをいつも注意深く見守っていたんだ。
またクリスは、自分のコーラスパートを僕にも一緒に歌わせようとしていたんだ。リッチなユニゾン効果を出すためにね。
楽曲のメロディを何度も練習するうちに、彼が楽曲に込めたクリエイティビティにただただ感動したものだ。
そして彼の声質がイエスサウンドにとっていかに重要な要素なのかということも発見したものだ。
メンバーに合わせて歌っているとき、感動で震えたり笑ってしまったりするのを必死にこらえたものだ。というのも、コーラスの部分はいつもキーボードのパートも大変に難しい部分だから。
とにかく必死に演奏を合わせていかないといけなかった。
そんなとき、クリスがあのリッケンバッカーを操りながら僕にニヤリと流し目を送るんだ。
”さぁ、お前のソロパートだぞ、トム。行け!”って。
ツアーに出ているときのクリスを観察していると、そこには「いつも音楽のことばかり考えている男」がいた。
彼はいつも、日々の生活の中でも、メロディとベースラインに耳を傾けて聴いていたんだと思う。
その数年後にイエスのコンサートのバックステージを訪問したとき。
クリスは僕をガッツリとハグしてくれたんだ。
そしてあの人懐っこいスマイル。僕はとたんに、あの夢のような共演時代を思い出したものだ。
思い出をありがとう、クリス。